【#インス旅】BMW M6 Cabriolet ╳ 小豆島

五感を刺激するオープンの魅力

──「そこに山があるから」
登山家ジョージ・マロリーが、なぜエヴェレストを目指すのかを問われたときに、こう答えたという。ではなぜ、人はステアリングを握って、クルマを走らせる衝動に駆られるのか?
──「そこに道があるから」

インスタ映えするポイントを求めて、今回は瀬戸内海に浮かぶ小豆島へ。瀬戸内海では、淡路島に次いで2番目に大きな面積を持つ小豆島の道を、M6 Cabrioletで縦横無尽に駆け抜けます。

#インス旅|SPOT 1 『寒霞渓道路』

オープンカーは、空気の乾いた土地、しかも海岸沿いを走るのが気持ちいい。北アメリカだと西海岸、欧州だと地中海に面したルートあたりでしょうか。日本にもスケールこそ敵わないけれど、それに似た場所があります。地中海性気候によく似た瀬戸内海式気候がそれです。

そこで、大阪から足を伸ばして神戸から小豆島へ渡ってみることに。

小豆島へ渡るフェリーは、本土から幾つも出ていますが、神戸からは片道3時間の船旅。直接小豆島へ渡る便は、朝便と昼便の2本が毎日運行されています。

乗船の手続きはあっけないほどすぐに終了。車検証の提出もありません。乗船まではM6 Cabrioletのシートで待機することにしました。

小豆島へ渡ろうと思ったきっかけはもうひとつあります。
3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸内トリエンナーレ)」の会場でもあるため。

のんびりと海岸沿いのルートを走りながら、島の各所に点在してるアート作品に触れながら、小豆島を感じてみたいと思ったからでした。

小豆島では坂出港から下船。すぐに幌を開け放って出発。

このルーフは40km/hまでは開閉可能で、走りながら広がった空には薄く雲がたなびいており、所々に淡い青空がのぞいています。なにより海からの風が心地いい。

海岸に沿った道を西に向かい、寒霞渓へと上る道へ右折。寒霞渓道路とよばれるワインディングで、M社謹製のV8のポテンシャルのほんの一部を開放してみます。

エレクトロニックダンピングコントロールを「コンフォート」から「スポーツ」に、サーボトロニックも同じく「コンフォート」から「スポーツ」へ。

サスペンションは明らかに引き締められ、コーナーでのロール量が減少します。まるで路面に貼り付くような感覚。急な上り坂でも、アクセルペダルを踏めば容赦なく身体はシートへと押しつけられるだけのパワー。

道幅はけっして広くない片側1車線のワインディングなのですが、不思議と全長4905mm、全幅1900mmのボディサイズが気にならないのです。

大袈裟かもしれませんが、Z4をドライブしているのとそれほど変わらない感覚。

車両感覚の掴みやすさは、BMWは1から7 Seriesまでほんとうに不変。それはBMWの美徳のひとつであります。オープンでM6 Cabrioletをドライブすることに身体が馴染んできたので、さらに速度域を上げます。風の巻き込みを最小限にするために左右とリアのウィンドウを上げます。

あまりに心地のよいルートを、自動車雑誌風インプレにするとこんな感じです。

──寒霞渓道路の少し荒れた路面のコーナーで、ミシュラン・パイロットスーパースポーツが滑り出す。少しだけカウンターをあてて修正し、コーナーを抜けた瞬間にさらにアクセルペダルを踏み込み、ダッシュ。寒霞渓道路から小豆島スカイラインへと抜けると、頭上を覆う木々が次々と流れ去っていく──。

 

#インス旅|SPOT 2 『小豆島の海岸沿いルート』

寒霞渓道路と違い、緩やかなコーナーが続く小豆島スカイラインは、さらにM6 Cabrioletのキャラクターにあったルートです。

白いガードレールがないので、このスカイラインはフロントウィンドから見る景色も開放的でついつい飛ばしてしまうのです。ただし、ルートから外れてしまったときの代償は大きくなってしまうので要注意。

このままこの胸のすく道が延々と続くといいのに……と、思い始めると、小豆島をぐるりと1周する幹線道路へと合流します。

すべてのモードを「コンフォート」に戻し、ウィンドウもすべて開け放ち、小豆島の空気を味わいながらのドライブへと切り替えます。

本土とはまた違った空気、そして人の生活を伺い知ることができます。窓を閉めたクローズドボディでは感じることのできない、その土地の匂い、空気、人の気配……といった情報が次々と五感を刺激するのです。

クローズドだと見過ごしてしまいそうな景色も、オープンだと新鮮に目に飛び込んでくるから不思議。つまり、初めての土地を走るのは、オープンの方が断然いい。

横浜から関西までの高速道路では、幌は閉めたままでのトリップでした。

M6ほどの車格になると、ソフトトップでも風切り音はさほど気にならず、眩しい太陽が降り注いでも頭上がチリチリと熱いといったことはありません。助手席との会話もお気に入りの音楽も、普通に楽しめるほど静粛な車内。

メタルルーフよりも、雨の日はしっとりと雨粒を受けてくれる幌の方が、個人的には実は好きだったりします。

しかもM6の場合、Coupéよりも明らかにCabrioletの方が、幌を閉じていてもエキゾーストノートとエンジンサウンドを堪能できるというメリットもあります。

リアウインドウだけを開けば、乾いた重低音のV8サウンドを聴き入ることも可能です。

しかし、フルオープンにしたときの心地よさには敵いません。さきほどのワインディングのように、持てるパワーを十全に引き出せるようなステージではなく、片腕をドアにのせて、サラリと流すといったようなドライブでも、エンジンの奏でるサウンドを気軽に楽しめ、そしてM6のパワーを聴覚で感じとることができます。

そしてなんといっても、ドライブしながらの発見──寄り道が楽しめます。

海沿いの道を走っていると、海へ抜ける小径を見つけて、さっそく寄り道することにしました。そこには思わず見とれるような夕景が待っていました。

まさに神の僥倖と呼びたいほどの夕景。土地の人の話によれば、めったに見ることができない瀬戸大橋も珍しくよく見えるそう。

刻々と変化する夕景と土地の人との会話を楽しんでいる内に、うっかり予定していた帰りのフェリーを逃してしまいました。

人生はよく旅に喩えられるけれども、旅には寄り道があったほうがいい。そして旅の伴は、オープンカーの方がより訪れた土地の記憶が鮮明に刻まれる。見知らぬ土地が、とても近しいものとなる。

オープンカーで走る──旅することは、見知らぬ土地に溶け込んでいくということにほかならないのではないのだろうか。そんな感慨に浸っていたせいで、最終のフェリーに乗ることになってしまいました。

神戸着岸は午前零時。横浜への帰路は真夜中という強行軍。その真夜中の高速道路を、再びオープンにして疾走すると、走り慣れたルートも新鮮に感じられ、風切り音と冷たい風も心地いい。

ほとんど走るクルマのない深閑とした高速道路は、どこまでも続いてるよう。人馬一体、それを五感で感じられるのが、M6 Cabrioletの魅力のひとつです。

ステアリングを握るクルマと、まるでひとつになったかのようなカタルシス。冷たい機械がハートの通うパートナーになる瞬間。

M6 Cabrioletとは、漆黒の高速道路をどこまでも走り続けられるような気がしていました。

 

M6 Cabriolet

 

車名 BMW M6 Cabriolet
価格(試乗車) 1,770万円(取材当時)
最高速度 250km/h(リミッター)
0-100km/h 4.3秒
エンジン V型8気筒DOHCターボ
排気量 4,394cc
駆動方式 後輪駆動
最高出力 560ps/6,000rpm
最大トルク 69.3kgm/1,500-5,750rpm
全長 4,905mm
全幅 1,900mm
全高 1,370mm
トランスミッション 7速M DCT Drivelogic

 

【photos & text】

西山嘉彦

LAMBORGHINI LIFE編集長
GarageLife副編集長
日本旅行作家協会会員
大学卒業後、ドキュメンタリー映像の助監督を経て出版業界へ。某建築雑誌の版元で編集技術をマスターし、縁あってクルマ系雑誌編集部のある版元へ移籍したのが運の尽き。以来、カメラ雑誌、グラビア誌、BMW専門誌など自分の興味あることを中心に雑誌を立ち上げる。その後、幾つかの月刊誌、スーパーカー専門誌の編集長を務める。現在はガレージ系雑誌などの編集などに携わっている。
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ART LIFE MAG. エディター・ニシヤマの徒然なるブログ

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